起業時はクラウドファンディングを頼ってはいけない
クラウドファンディングは、新商品開発や新規サービスの立ち上げなどに必要な資金をインターネット上で不特定多数の方々募ることができる資金調達方法です。
見かけ上は、自分で資金を用意しなくても必要資金を用意できるので、とても都合の良い仕組みだととらえられています。
クラウドファンディングの成功例として有名なものに、キングコング西野さんの絵本「えんとつ街のプペル」があります。
このプロジェクトは、募集目標180万円を大きく上回り、最終的には、4,600万円を6千人の方から集めるのに成功しています。
そのため、参加者の中には、クラウドファンディング内にプロジェクトを作って公開するだけで、お金が勝手に転がり込んでくると考えている方もいらっしゃいます。
私も以前はそう考えており、何度も挑戦しては失敗してきました。
実際に、クラウドファンディングを成功させるためには、事前計画と仲間集めは勿論のこと、自分の身内などをお願いしてまわるという非常に泥臭い作業も必要なことにも気づきました。
ここからは知られざるクラウドファンディングの側面について触れていこうと思います。
支援者1/3の法則
CAMPFIREでは、プロジェクトの支援者の1/3は「自分の直接の友人」、1/3は「自分の友人の友人」、残りの1/3が「全く知らない人」という前提で動くことを推奨しており、友達のそれぞれの想定支援金額をリスト化して、目標金額の1/3に達していなかったら、さらに多くの友達を捕まえるか、目標金額を下げることも考慮に入れるべきだと述べています。
その背景にあるのは、プロジェクトが盛り上がり、自分の知人以外の参加者にも認知してもらうためには、目標金額の1/3が埋まっていることが重要とされているからです。
つまり、支援額の1/3は自分の今まで培ってきた信用をお金に換える作業になります。
全然「無料」ではないことがわかるでしょう。むしろ、信用の換金レートとしては悪いのではないかと私は思ってしまいます。
本当にそこまでしてしなければいけない事業なのかをよく考えて行いましょう。
そして、その後の友人関係などにも影響は与えることになるでしょうから、そこも踏まえてやるかどうかを決めましょう。
クラウドファンディングが可能かどうかの条件
ここからわかるように、クラウドファンディングで成功するためには、影響を与えられる自分の知人・友人が一定数確保できなければできません。
100万円を知人ネットワークで集める必要がある場合、自分のアイデアに1,000円出してくれる友達が1,000人、1万円出してくれる友達が100人必要となります。
これらの人数を確保できる方にはお勧めできます。
そもそも、数千万円から1億円を借り入れたい起業家の調達にあまり適していないといえるでしょう。
さらに、100万円程度であれば、自分の信用を売るのではなく、普通に働いて貯めればいいのではないかと思ってしまいます。
また、集金する場合、一人一人にお願いしていかなければならず、起業前の貴重な時間を不確定な資金調達のお願いのために割かなければなりません。
その時間を使って、モデルサイトを作成して需要観測してみるほうがよっぽど効率的だと思います。
クラウドファンディングにかかる手数料
さらに、クラウドファンディングのサイトを使って資金調達した場合、目標金額に到達または募集期間が終了した際に、手数料がサイト運営者に落ちる仕組みになっています。
その利率もご存じですか?
代表的なクラウドファンディングのサイトとして「CAMPFIRE」や「Makuake」があるのでそちらの手数料の利率を確認してみましょう。
「CAMPFIRE」手数料12%+決済手数料5%+消費税8%=25%
「Makuake」 手数料15%+決済手数料5%+消費税8%=28%
これらのパーセントが自分のプロジェクトで募集した金額から差し引かれることになるのです。
クラウドファンディングで集めた資金の98%が自分の知人や友人であったという人もみられ、その場合の信用換金効率の悪さは驚愕のレベルです。
これならば、利率3%程度の創業融資を受けた後に、直接自分の商品を買ってもらったほうがまだましな気がします。
拡散が見込めない個人的なプロジェクトはおとなしく銀行から借り入れましょう。
アイデアが奪われる危険性
クラウドファンディングをする上で、自分のアイデアを公開しなければならないので、もし公開したアイデアにお金が集まっているのを競合が見つけたら、クラウドファンディングを通さず、より割安な価格で、先に商品を提供される可能性があります。
事前に、技術的に他人がまねできないなどの制約を持ったうえで実施しましょう。
クラウドファンディングが使われるのはなぜか
このようなマイナスの要素を持ちながらも、クラウドファンデリングが行われるのには理由があります。
まず、クラウドファンディングが広告宣伝の役割も担っていることがあります。
例えば、「CAMPFIRE」では支援者数49万人を抱えているので、情報感度が高い多くの人に対して自分の商品をプレゼンできます。
また、SNSなどでバズらせる際にもクラウドファンディングの熱量が伝播しやすく、より拡散されやすい環境を作ることができるのです。
ここから見えることはクラウドファンディングの主な使い方は、事業基盤が整えてあり、商品群も保有している状態での、認知度底上げのタイミングの使用がベストであるように思えます。
100万円分のテレビ・雑誌の広告枠を買うよりは、断然効果が出そうですね。
すでにお金に困っていな状況なので、友達にモノを渡し、その代わりに、入金してもらうなどのトレードも可能になります。
目標金額を集めるための工夫
3分の1ルールを守った後に、さらに、3分の2を積み上げるためには何をすればいいのでしょうか。
大きく分けて二つあります。
1つは、共感されるストーリーを作ること。
知人から先の全くの他人にも出資してもらうためには必ず必要となってきます。出資者に理解されないで、お金を集めることはできません。
直感的にはかなりわかりずらいと思うので、実際に目標金額を達成しているプロジェクトを参考にしてみるとヒントが見つかるかもしれません。
2つ目は、面白いリターンを設定すること。
リターンが面白ければ面白いほど、それを周りの人にも伝えたくなりますし、積極的に周りの人に伝えやすくなります。
SNSを利用して一気に広げていきたいと考えている人は、リターン設定にこだわるのが一番かと思います。
また、リターンによってクラウドファンディングの種類もわかれており、寄付型、購入型、金融型の3種類に分類することができます。
リターンの形態によって、クラウドファンディングのすみわけがあるので自分のプロジェクトはどのクラウドファンディングで掲載するのがベストなのか事前にチェックしておきましょう。
支援者層が違うので、違うカテゴリーのクラウドファンディングに申請してしまうと、プロジェクトが却下されて時間の無駄になります。
寄付型:JapanGiving(ジャパンギビング)など
購入型:CAMPFIRE(キャンプファイヤー)、Makuake(マクアケ)など
金融型(融資型、ファンド型、株式型):ミュージックセキュリティーズ、maneo、日本クラウド証券など
クラウドファンディングと税金
最後に税金ついても触れておきたいと思います。
実は、クラウドファンディングで集めた資金に対して税金がかかります。
ただ、資金の受け取り手と出資者の関係によっても税金の種類が変わるため、そこも確認していきましょう。
購入型・金融型
購入型・金融型は、資金提供の代わりに、商品やサービスを受け取っているとみなされるため、出資金は売上となり、それに対して消費税がかかります。
また、売上がたつことになるので、個人の場合は確定申告が必要な場合があります。所得増の影響は住民税にもかかるので住民税も増えることになります。
寄付型
寄付型の場合はリターンが発生しないため、下記のようなパターンに分かれます。
個人から個人への寄付の場合は、贈与税。
法人から個人への寄付の場合は、一時所得。
個人から法人または法人から法人への寄付の場合は、法人税となります。
きちんと税金対策も頭に入れてくれぐれも脱税にならないようにしてください。
最後に
どうでしたか。クラウドファンディングを知れば知るほど起業時の資金調達には向かないことがわかったのではないでしょうか。
起業時は自己資金または銀行融資でしっかり賄っていきましょう。
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