起業と共同創業者
起業は必ずしも一人でしなければいけないものではありません。
皆さんがご存じの世界の名だたる企業のいくつかは共同創業者によって建てられています。
Appleのスティーブ・ジョブズ&スティーブ・ウォズニアックをはじめ、Googleのラリー・ペイジ&サーゲイ・ブリン、そして、Microsoftのビル・ゲイツ&ポール・アレンなどがあげられます。
共同創業者がいることで企業の成功確率が高まるとさえいわれています。
共同創業者のメリット
では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
実は、事業規模を拡大するのに要する時間が、1人で起業する場合の3分の1以下になるといわれています。
さらに、スタンフォード大学の調査では、技術系とビジネス系の創業者の組み合わせの場合、一般の企業に比べて、30%ほど資金調達量が多く、2.9倍の成長が見込めると発表しています。
では、これから起業する人はパートナーを急いで探したほうがいいのでしょうか。
そういうわけではありません。
複数名起業のデメリット
実は、大きなデメリットもあるのです。
スタートアップで起こる問題の61%は経営陣の仲たがいといわれています。
創業者間の争いは驚くほどみられ、Y combinatorが投資するスタートアップの20%で創業者が会社を去っています。
手を出すべきではない起業メンバーの募集方法
最近では、起業メンバーを募集するポータルサイトも見かけるようになりました。
これらの募集サイトでは、希望するスキルや仕事条件が一致する仲間をすぐに見つけることができます。
検索すると、ジモティ、ocosba、WantedlyやIndeedなどいろいろなサイトが見つかります。
同僚や知り合いの中に、起業仲間を見つけられない場合は、このようなサイトに頼りたくなる気持ちはよくわかります。
結論から言います。やめておきましょう。
では、なぜやめたほうがいいかを説明していきます。
求人で起業メンバーを募集すべきでない理由
確かに、求人により起業メンバーを募った場合、簡単に必要なスキルを持った人々を見つけることができます。
ただ創業期に必要なことはどちらかというと、スキルとは違った部分なのです。
Y combinatorは、企業の際に必要なのは、メンバーの能力ではなく、メンバーの性格と熱心さのほうであると説いています。
また、先に創業者の争いに触れたように、同じ価値観を持っていないと、リーダーが何人も出てくる状況が発生し、運営が迷走しやすいのです。
この価値観の共有というのは、一朝一夕にできることではなく、長い年数を要します。
例えば、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは学生インターンで出会っていますし、ビル・ゲイツとポール・アレン氏は幼少期からの友人、Googleのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは学生時代からの友達です。
そのくらい長い関係性を持っていたからこそ、創業期という熾烈な戦いを潜り抜けることができたのです。
Y combinatorによれば、共同創業者として成功している約半数が学生時代からの付き合いだと述べています。
ベストは良い共同創業者を持つことですが、次点は、一人起業、最悪なのは、合わない共同創業者を持つことだといわれています。
なので、自分の身近に起業メンバーになりうる人がいないのであれば自分一人で起業しましょう。
そのほうが安全です。
身近に起業メンバー候補がいる場合
会社の同僚や学生時代からの友達で、一緒に起業できそうな人を見つけたとしても安心してはいけません。
共同創業は、「結婚」と同じといわれるほど重いものです。
安易に決めたら一生後悔します。
まずは、平日夜や週末だけ活動する草ベンチャーから初めて相性を確かめていきましょう。
ビズリーチの南さんも、草ベンチャーから始め、さらに、オープンから1年以内に1億円以上の資金調達ができなければ解散、と設定して活動していました。
このように、解散時期も決めて、ハードな環境で高密度の接触を保つことでみえてくるものもあると思います。
今後共同創業したい場合
起業を今後考えているという方は、自分の身の回りにそのような友達がいるか確認して、まめにコンタクトをしておくことが大切でしょう。
もし、自分の周りに起業メンバー候補が見つからないが、それでも共同で始めると決めている方は、Googleなどの有名なテック企業へ転職したり、他のスタートアップに参加する、シリコンバレーに移住するなどの方法が考えられます。
共同経営のポイント
起業メンバーで共同経営をする上で重要なことが3つあります。
それは、役割分担、ゴールの定義、報酬です。
順を追ってみていきましょう。
役割分担
メンバーの役割分担が曖昧だと、業務量に差がでたり、主導権の争いでトラブルの原因になります。
まずは、共同創業者の強みと弱みを知ったうえで、お互いにどこを補完しあっているのか、それに対応する役割は何なのかを明確化しておくことが重要です。
事業を始める前に、役割について、全員の合意をとった上で、運営を開始するのがベストです。
ゴールの定義
起業のゴール地点を最初に決めておきましょう。
上場時に売り抜けることを目的とするのか、長期的に企業として運営していくのか、そもそも、上場するのか、しないのかなどは企業の運営に大きくかかわってくるので、メンバー間で共通認識を作っておくことが重要です。
報酬
一番重要なお金の部分です。
株式の配分については詳細な決まりを設け、合意を取っておきましょう。
買取規定、買取時の価格、ベスティングについてが網羅されている創業者間契約書は必ず作るべきです。
ベスティングとは、時期の経過に応じて権利を確定させる契約条件です。
例えば、任期を1年務めるごとに、割り当て分の株のストックオプション行使権を20%ずつ認めていき、5年経過すれば100%行使可能とすることなどを定めることができます。
会社に貢献した分だけ支払う形にすれば、袂を分かつことになってもお互い納得して別れることができます。
最後に
起業は、創業者の人生観や価値観が強く現れるイベントですので、起業メンバーの獲得に動く際には、細心の注意を払って進めましょう。