起業家への銀行融資はおりない
漠然と起業した際には銀行にお金を借りに行こうと考えている方は多いと思います。
私も、自己資金が足りなくなった場合は、銀行にいかなければと緩く考えていました。
この金融環境下で、地方銀行などは業績が低迷しており、貸し先を血眼になって探していますので、新しい案件が出てくれば、審査基準が緩まるのではないかと思ってしまうのも無理はないかと思います。
静岡銀行などの一部の地方銀行は、対応してくれますが、現実は厳しいままのようです。
銀行はあくまで民間の機関であり、起業してまもない不確定要素の多い人々を対象にすることは、リスクの観点から避けたいのです。
銀行は、過去の財務諸表からスコアリングといわれる方式によって企業を評価して、貸付を実施しています。
どんなに頑張って事業計画書を作成しても、設立されたばかりの会社は、財務諸表がないため評価されないのです。
よくても創業から3期は迎えており、ビジネスモデルや運用者の性質も可視化できる状況になっていないと難しいようです。
そのような状況下で我々起業家はどのように資金を銀行から借りればいいのでしょうか。
もう、自己資金の積み増しやクラウドファンディング、エンジェル投資家に頼るほかないのでしょうか。
創業融資が使える日本政策金融公庫
銀行の中でもすみ分けがあり、実は銀行の中でも創業融資に非常に力を入れている機関があり、それが日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫とは、2008年に政府の100%出資で誕生した公的金融機関です。
設立目的は、融資を容易に受けられない、創業者等を対象に融資を行い、経済の活性化、ひいては雇用の創出に貢献することにあります。
そのため、公庫では、民間では手が出せない、創業者への融資に積極的で、実績のない起業家がお金を借りられる代表的な金融機関となっています。
創業者に対して、無担保・無保証人で3,000万円までお金を貸してくれる新創業融資制度が有名です。
「無担保・無保証人」とは、仮に自分の会社が倒産しても、借金を返さなくて大丈夫ですよ、ということです。
チャレンジングな起業に挑戦される方には大変ありがたい制度ですね。
民間で借りると、少なくとも社長は、保証人になるように要求され、会社が倒産したら、個人として債務を負い、返済のために働かなければならないのです。
また、公庫を使う場合、条件が厳しくなく、変動しない低金利で、長期間の融資を組んでくれるので、安心して借りにいけます。
さらに、事業が安定するまで、事業に専念できるよう猶予期間も設けてくれるなどの手厚いサポートも期待できます
信用保証協会の活用
日本政策金融公庫以外にも創業者に協力的なサポートがあります。
信用保証協会と呼ばれるもので、起業家が銀行から借金する際に保証人になってくれる公的機関です。
保証料を払う必要はありますが、信用保証協会に間に入ってもらうことで、銀行から好条件の融資を受けることができます。
彼らの融資制度の中でも、地方公共団体による制度融資は、さらに魅力的な制度になっており、市区町村が、信用保証協会の保証に、さらに融資補填を加えて起業家を支援してくれるものです。
ただ、結局、お金を貸すのは、民間の金融機関で、信用保証協会は間に入っているだけです。
そして、保証制度の中には、責任共有制度という、民間金融機関も一部補填してくださいという項目も入っているので、どうしても融資は慎重にならざるを得ません。
また、資料集めや関係機関との折衝なども煩雑で時間もかかり、融資がなかなかおりないという状況が現状としてあるようです。
つまり、銀行融資は日本政策金融公庫の一択だということです。
公庫融資の成功確率
では、実際に日本政策金融公庫の融資の成功率はどれぐらいなのでしょうか。
銀行員の間では、およそ30%程度とされています。
厳しいとみるか、無担保・無保証人を勝ち取れることを考えたら十分な確率だとみるかは人それぞれだと思います。
一般的には、創業計画書をきちんと準備して、一緒に資金繰り計画をあわせてプレゼンできれば案外受かるともいわれています。
では、実際にどのような準備が必要なのでしょうか。見ていきましょう。
融資獲得のポイント
書類の中で、最も重要なものは「創業計画書」といわれています。
3000万円をかなりの好条件で獲得できるのですから、コンサルタントや税理士などの専門家からサポートを受けて作成することをお勧めします。
同時に資金計画書も作成するのですが、創業計画書よりも資金計画書のほうをご自身で作られ、専門家のサポートをフル活用して自身の資金繰り感を確認してください。
というのも、起業家の倒産理由の20%程度が資金繰りの理解不足だからです。この際、そこもきちんと克服しておきましょう。
下記に公庫からの質問ポイントをまとめましたので、こちらも必ず頭に叩き込んでおきましょう。
事業内容
自社の取扱商品やサービス内容や業界動向についてもチェックされますが、前職との関連性も審査のポイントになるので注意しておいてください。
特に、完全な素人で業界に新規参入する場合、融資する側もかなり厳しく査定してくることが予測されます。
うろたえないようにロジックと数字、前もって調査しておいたデータや需要観測データで武装して臨みましょう。
また、赤字が延々と続く事業計画書を作成してはいけません。公庫としても税金で運営されているわけで、それを無駄にすることはできないからです。
資金の使用用途
設備資金は、設備の現物もあり、見積書を提出すれば理解されやすいですが、運転資金の場合は、項目で確認できないので説得するのが難しくなります。
業種と事業規模の相場観を客観的に導き出して、融資希望額が妥当であることを示さなければなりません。
担保
無担保・無保証は、あくまで融資額が限られている場合の話で、大型の案件では条件によっては担保を要求されることもあるようです。
事業の運営実績がなくても、起業家が担保にだせる土地などを持っていれば、融資には有利に働きます。
自己資金
自己資金額とその比率だけではなく、その自己資金をどのように貯めたかのプロセス調査されます。
つまり、親族からの借り入れで自己資金を賄うと評価は悪くなりますし、一時的に消費者金融から借りて、貯金額の嵩増しが発覚した場合には、融資を却下されてしまうケースすらあり得ます。
逆に、自分で給与を積み立ててきた人は評価が高くなりますので、いまから準備しておきましょう。
面接態度
書類提出後、10日間ほどで、公庫の担当者から面接のための電話が入ってきます。
面接では、提出資料についてあらゆる点から質問されることになるのですが、回答内容だけでなく、回答する姿勢も見られていることに注意してください。
あくまでも誠実に受け答えし、見栄を張らないようにしましょう。
返済
融資下りたら、最短で翌月から返済が始まります。
無担保・無保証だからと管理をおろそかにしないようにしましょう。
融資の実績だけでなく、返済実績も後々の融資に響いてきます。
たとえ、計画通りに売上が上がらなかったとしても、1年目は必ず期限通り返済を実行しましょう。
今後の融資を拒否されてしまいます。
終わりに
起業時に頼れる銀行は、実は日本政策金融公庫しかなかったんですね。
公庫は是非とも味方につけておきたいので、万全の準備を整えて向かい、たとえ融資が成功しなかったとしても先方に好印象が残るように配慮して行動しましょう。
再挑戦時に活きると思います。