OculusがFacebookに与える影響
世界最大のソーシャルネットワークサービスを提供するFacebookは、売上の98%以上を広告収入で上げていることで有名ですが、近年少しずつ存在感が増している分野があります。
それがVR分野、特に、Oculus製品群で、第一四半期Facebookの広告収入外の約320億円(Facebookの売上の1.6%)を牽引しています。
ただ、Oculus製品を販売しても利益はあがりません。
というのも、Oculus製品はほぼ原価で販売されているからです。
では、どのようにFacebookは利益をあげていけばよいのでしょうか。
Oculusのビジネスモデル
Oculus製品を語る際に、コンテンツ内容について言及されることが多いのですが、実は、Nintendo switchやAmazon、そして、iphoneなどと同じ、プラットフォームモデルを採用しており、コンテンツの内容は別会社が制作しています。
プラットフォームモデルとは、商品やサービスと顧客が出会う場を提供するビジネスモデルで、Oculus製品を通して、VRソフトのサービスと顧客をうまくマッチングさせているのです。
さらにFacebook側としては、Oculusのコンテンツとして多様な商品を扱うことができるので、複数の業界を跨いだ商品を展開することができます。
利益のあげ方としては、パートナー企業が作成したコンテンツの収益の一部がプラットフォーマーに還元されるという形になります。
つまり、コンテンツ作成会社とOculusは一心同体で、どちらかが欠けても収益が上がらないのです。
もちろん、プラットフォーマーの競合も存在しており、Playstation VRやマイクロソフトのHololens、さらに、アップルも買収したカナダ企業の技術をもとに参入しようとしています。
なので、プラットフォーマー側としては、いかにパートナー企業にやさしい開発環境を用意するかの勝負となっています。
多くのパートナー企業と提携し、より上質なコンテンツが多くなるほど、ユーザーを集めることができ、プラットフォームを拡大できるからです。
Facebookの課題
ターゲットの再定義
IDC Japanの資料に記載されている「AR/VR関連サービスへの合計支出額」を参考にすると、2018年89.0億ドル、2019年は168.5億ドル、2023年に1606.5億ドルに達すると予想されています。
ただ、このAR/VR関連市場の拡大は「ビジネス分野」に偏っており、Oculusの主戦場ではなく、マイクロソフトのHololensが一番力を発揮する領域です。
実際に、トヨタやJRもHololensを研修や製造工程の効率化に組み込んでいます。
この流れを受けて、Facebookもビジネス用VRへの取り組み強化を行い、BtoB向けビジネスVRプラットフォーム「Oculus for Business」の一般販売を昨年から始めました。
どこまでマイクロソフトのHololensなどの競合に食らいつけるかの勝負になります。
コンテンツに対する審査の厳格化
現在は高品質なコンテンツをそろえることができているOculusQuestですが、以前のOculusシリーズに比べ、コンテンツの審査を厳しくしているという声をききます。
これは提携するパートナー企業にとっては、負担となるので、プラットフォームの乗り換えや、十分なコンテンツ本数が確保できないという現象が起こりえます。
購買体験の質向上が顧客を呼び込むのか、コンテンツ不足で顧客が離れていくのかが注目ポイントになってきます。
後追い商品
現在、マイクラやフォートナイトなどのゲーム内交流だけでなく、VRchatやRec Roomなどの仮想空間でのソーシャルコミュニケーションも流行ってきています。
自身をアバター化してのVR上で活動するSNSとして、Facebookも力を入れ始めており、Facebook Horizonというサービスが新たに生まれました。
このVRSNSの登場で、仮想空間を複数人でシェアできるコンテンツが増えるのでユーザー数の増加に貢献すると考えられています。
ただ、すでに利用者が根付いている他サービスとの差別化がうまくできていないと、利用者も新サービスを利用する必要がないので、そこをうまく打ち出せるかがFacebookの課題となっています。
現状のOculus製品の楽しみ方
やはり現状のOculus製品の楽しみ方はゲーム関連となっています。
今第一四半期のOculus製品の売上増加要因は、2019年11月に発売された「Half-Life: Alyx」というゲームの利用に使われたからという説もあります。
日本勢では、VRミステリーアドベンチャーゲームである「東京クロノス」が世界でも活躍しています。
Facebookもプラットフォーマー側だけではなく、コンテンツ製作側であるVRリズムアクションを流行らせたBeat Gamesを買収し、独自のコンテンツ強化を図っています。
今後のVRの使われ方
バーチャル勤務
今回紹介する米国eXp Realtyは、一見変哲もない、建物の売買仲介を扱う普通の不動産会社なのですが、従業員数約12,000人のうち9,000人ほどが毎月バーチャルな空間を使って仕事をしています。
また、従業員だけではなく、建築業者、エージェントなどの関係者が、バーチャルな世界に集い、会議をし、時には、教育や研修を受けています。
先のリーマンショックがきっかけで、会社運営の方針をバーチャル勤務に一気に切り替えており、今回のコロナパンデミックでその先見性が実証されたといえる企業です。
勿論問題もあり、現状はコストの関係上VRデバイスを使わず、パソコンのウェブブラウザ上で、アバターを通して歩き、勤務しているとのことです。
他には、VR内では、従業員が自身の仕事に集中しがちで、仲間とのコミュニケーション頻度が少なくなってしまうようです。
そのため、近頃はVRオフィス環境にバーなどのソーシャル要素を持ち込み、コミュニケーションの活性化を狙っているようです。
従業員研修
米ウォルマートは従業員の研修用にOculus製品を、1万7000台導入しました。
そのうえで、VR研修ソフト開発会社STRIVR Labsと組んで、50以上の研修プログラムを独自に開発しています。
今後もリモートワークから発生する人事不要の教育体制の強化が課題としてあげられるので、このような会社は増加すると思われます。
仮想空間での購買体験
KDDIとFacebookが組み、仮想空間でのショッピング体験できる「フューチャーポップアップストア」の検証を2020年3月末から始めました。
既にVRchatの中では商品の売買が行われており、どこまでの商品がVRの中で売れるようになっていくのかが楽しみです。
これはユーザー数が増えれば増えるほど充実してくるので、ショップ展開はまだ先の未来ですが面白い取り組みであるといえます。
最後に
今回はFacebookのVRプラットフォームモデルの中核を担うOculusを中心にVRの世界について触れてきました。
今後我々の未来にかかわってくる分野なので早めに触れておくことをお勧めします。
私もVRchat仲間ができると嬉しいのでその際は気軽にお声掛けください。