ここまでの記事で購入時点での物件の収益構造はわかった。
購入時点と書いたのは今後その収益構造が変化するからである。変化とは、入居者の退去のこと。
さて、今までの計算は空室率を総賃料の5%としたが、これは実際正しいのだろうか?
築年数、退去率に対する影響がここにはうまく現れていない気がするので再度検証する。
検討のベースとなった仮説は下記。
・築年数が増加するにつれ、物件の魅力は下がるので、退去率は増加するのではないか?
・空室になった際、管理会社に任せると毎回賃料の値下げで集客されるのではないか?その場合、どの程度まで賃料減少のインパクトがあるか。
例えば、10年で売却するモデルの20部屋アパートを米国のシングルファミリーのテナント居住期間3年かつ退去時は1.5ヶ月の空室と想定し、空室率を確認する。
10年間での最大空室数(1年目から20室全室入替の状況)から月間部屋単価×空室数20×空室期間1.5か月分×4年分(1年目、4年目、7年目、10年目)の総額を10年分に均等し、年間グロスの賃料収入で割ったところ空室率は5%。
以外に5%はしっくりくるようだ。
では、物件の経過時間の影響を出すため空室期間を弄ってみよう。
空室期間1年目を1.5か月据え置き、4年目を2か月、7年目を2.5か月、10年目を3か月とした時どうなるか?
空室率は年率8%に跳ね上がる。
他の条件は全て同じにして空室率だけを変更した場合キャッシュフローの合計はどう変わるか?
7億円規模の20部屋アパートの場合、
空室率5%の際:キャッシュフロー合計 $1,492,502 IRR 9.46%
空室率8%の際:キャッシュフロー合計 $1,300,844 IRR 8.2%
手取りの12.9%程度が吹き飛んだ。この威力は絶大である。
ただ、空室状態が続くとさすがの大家も嫌なので管理会社にどうにかするようにいう。そしたら、返事はこうだろう。
「マーケットの価格に合わせましょう。」
つまり、需要と供給で供給が多くなりすぎた場合、投資家のランニングコストなどは関係なく、値下げしなければならないのだ。
しかも、いくら値下げすればくるという目安もマーケットに依存する。
この結論ではためにならないので、上記と同モデルで空室長期化を回避するため4年目、7年目、10年目の総入替時に3%の値引きが入ったと想定。
なぜ3%かというと日本でこの価格差であれば差別化できると聞いた価格差を参考にしている。人の認知はそう違わないだろうと。
これにより換算できた数値が下記である。
キャッシュフロー合計 $1,243,416 IRR 8.11%
元々の数値と比べてみよう。
キャッシュフロー合計 $1,492,502 IRR 9.46%
空室期間の増加より悪質で16.7%程度の手取りが吹き飛んだことがわかるだろう。値下げの判断も慎重に行う必要がある。
結局は、優秀な管理会社に任せればいいのではないかと考えられるが、これらがわかっていないのに、そもそもどこが優秀かを判断できないというのが私の判断である。
ちなみに、業界では下記の区分けが管理でもあるらしい。
賃貸管理:賃料の回収・集計などの経理業務、空室物件の募集や入居希望者への対応、更新手続き、退去立ち会い、解約手続きなど賃貸物件に関するすべてのマネジメント業務
建物管理:法定点検(エレベーターの保守点検、消防設備の維持管理など)、経年劣化に伴う外壁の修繕やガス・電気などの設備交換、大規模修繕、マンションの清掃やゴミの衛生管理、植栽の維持管理など
本当であればビル全体のリフォーム(外観・エレベーターなど)および顧客に貸し出す空間のリフォームに対する投資対効果がわかれば効率的に退去率・空室率を管理できると思う。
そのために必要なデータは、資金投下額とその投下の恩恵を受けた対象の契約更新率・居住期間が必要となる。一般人には手に入れられないデータだ。悔しいが。