米国レストランの決済時に毎日お世話になっていた「Square」のビジネスモデルについて本日はふれていきたいと思います。
「Square」とは、ネットにつながったモバイル端末と専用のカードリーダーを用意することで、店舗側に、クレジットカード決済の受付を可能にするサービスです。レストランを中心とした小売店で見かける機会が多いかと思います。
今回「Square」のサービスに触れようと思ったきっかけは、米国から帰国し、空港からタクシーで家まで帰る機会があったのですが、その際に、カードもアプリも使えず、現金のみしか受け付けもらえないというハプニングが起きたことです。
皆さんがご存じのように米国はカード社会なのですが、今回のタクシーのように、米国にもカード決済に対応できない事業者が以前は山ほどいたのです。
そんな彼らを救ったのが「Square」だったのです。
「Square」が解決した問題
「Square」が解決した問題は、大企業のフランチャイズチェーンように資金がなく、カード会社の入金サイクルが資金繰りを圧迫し、高価なカードリーダーを備え付けることも負担になる小さな店舗に、カード払い客受け入れ可能の道を切り開いたことです。
「Square」が可能にしたスピーディーな入金サイクルは、レストランなどの現金で毎日の材料を仕入れなければならないサービスにかなりの恩恵を与えます。
確かに、スモールビジネスを相手にすることで貸し倒れリスクを抱えることになりますが、「Square」は導入企業への管理技術を高めることで補っています。
「Square」のビジネスモデル
「Square」のビジネスモデルを簡単に説明すると、
収益=手数料3.25%×利用者決済額
となり、利用者決済額を増やすために、より多くの店舗に「Square」を導入して利用者数の押し上げを狙います。
より店舗にとって導入メリットがあればあるほど「Square」の設置数及び利用者数が増えるので、「Square」側もそのためのサービスを強化します。
その中でも強力なのが下記となります。
・超最短入金サイクル(基本翌営業日だが取引銀行による)
・多様な請求手段の提供(請求書による先払い、サブスクリプション決済、オンライン決済)
・無料POSレジを代表とする経営サポートツール
・返金保証制度
ここで疑問が出てくると思います。
なぜ、いままで超最短入金サイクルは実現されなかったのか、そして、どんな仕組みで実現されているのでしょうか。
超最短入金サイクルの仕組み
「Square」は、この仕組みについては口を閉ざしています。また、日本語・英語の情報を探してもヒントになる記事はでてきませんでした。
なので、私が推測する超最短翌日払いを可能にする仕組みを書きます。
「Square」側口座からの視点で見ていきます。
仕組みはシンプルで、
1.顧客の決済額が「Square」が保有する三井住友銀行などの銀行口座に振り込まれる
2.振込情報が三井住友銀行だけではなく、「Square」にも同時に流れる
3.「Square」は流れてきた情報をAIで自動計算し、自社取り分を抜いた額をはじき出す
4.はじき出した店舗取り分金額を、「Square」保有口座から、顧客決済額情報に付与されていたデバイス番号と連動する店舗口座アカウントに自動的に出金指示をかける
5.三井住友銀行は出金指示があった金額を店舗口座アカウントに振り込む。おそらく、ワンクリック作業レベル以下まで落とし込まれているはず。もしかしたら、機械が自動で処理している可能性もある。
おそらく、1から4までの間が秒単位で処理されていると思うので、あとは三井住友銀行のポチるまでの時間に依存するのではないかと考えています。
重要な点は、入金作業と出金作業を別物とすることで、銀行に処理させる余地をなるべく減らしているのではないでしょうか。
もう少し具体的に言うと、入金額から手数料分を差し引くなどの煩雑?な処理をなくすことで銀行側のチェック担当者数が大きく変わるのではないかということです。
三井住友銀行とそれ以外の銀行などで「Square」側から店舗への入金サイクルが違うのは、口座を開いているかいないかの違いだと考えています。
そして、「Square」が最初に口座にお金を積むこと(銀行からの借り入れ)で、以前は中小店舗が負っていた資金繰りのリスクを「Square」が引き受けているのだと思います。
楽天のサービスが楽天銀行口座での利用で優遇されるのはそのような背景があるのだと推察されます。
この予想が大きく外れているようでしたら、関係者の方、他言無用でもいいので、こっそり真実をご指摘ください。
私の推測を裏付ける根拠として、「Square」のバランスシートの流動負債が固定負債を上回っていることがあげられます。
VISAなどのカード会社では、同様の現象がみられないこと、成長企業なので長期負債で投資資金を確保できるにも拘らず、短期負債が上回っていることからも、示されているのではないかと思います。面白い仕組みです。
ちなみに、「Square」の売上は2019年12月31日日時点で、$4.7Bなので4700億円程度となりました。過去3年を振り返ると毎年40%程度の売上を増やしており、2017年に営業利益が黒字化、2019年に初めて純利益が黒字化しました。
営業利益の伸びが毎年3倍なのが恐ろしいほどの勢いを表しています。
まだ、日本での電子決済には対応していないなどの問題はありますが、そこが解決されるのは時間の問題のように感じます。
社会の問題をとらえ、業界の構造を変えてしまった将来有望な企業です。
「次のスティーブジョブス」とも目される、麒麟児ジャック・ドーシーから今後も目が離せません。
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