先日Grant Deed(グラント・ディード:不動産権譲渡)について話していたところ、積水ハウスが地面師に63億円だまし取られた事件について話題に上りました。
米国、カリフォルニアでは絶対にありえないと一同が言っていたのでなぜありえないのか自分なりに調べてみました。
州によって制度が違うので、ここではカリフォルニア州に限って話をします。
簡単に日米の違いを説明すると、
日本の物件譲渡の際に重要視されるのは、国が保管する物件の所有証明書であり、基本売り手と買い手の合意に基づき譲渡が行われます。
一方で、米国は物件の譲渡の際に州公認のエスクロー会社(中立的な第三者の立場)が契約を監督し、監督業務の中で、エスクロー会社は、タイトルカンパニー(Title Insurance Company)に対し、譲渡証書の調査を委託し、タイトルカンパニーは、売主の権原に瑕疵がないか、譲渡証書が真正なものであるか、登記関係書類に偽造・不備がないか等について確認をするのです。
タイトルカンパニーは、物件の所有権(タイトル)に対する保険を発行してくれる保険会社のことを指します。保険が発行されることで、不動産の所有者に所有権の保証がなされるのです。
タイトルカンパニーは、物件詳細を保険として買主に販売し、もし、物件の詳細が誤っていた場合は、タイトルカンパニーがすべて損害も全て補償します。
1000ドル程度の保険料金(物件価格によるが)のためにその数百倍の損失を被りたくないため、タイトルカンパニーも必死で調査します。
なので、積水ハウスの事件の要となる国の証書の偽造(本人確認用の印鑑登録証明証、パスポートなど)もタイトルカンパニーの調査守備範囲内であり、公的記録にもアクセスできるため証書の偽造などもすぐに気づくことができる、ということです。
制度的な責任や報酬体系などの存在しない日本の司法書士とは異なる立場なのです。
ちなみに、「買主」のためのタイトル保険料は、「売主」が負担し、「ローン貸主」のための保険はローンを借りる「買主」が負担するのが一般的です。